経営者のひとりごと

「必要とされる存在になる」と、今の仕事はもっと好きなる

「必要とされる存在になる」と、今の仕事はもっと好きなる

15年以上付き合いのある友人と焼肉に行った時の話。

その友人は唐突にこんな事を言い始めました。

「好きなことを仕事にするのは、辞めようと思う。」

いつも好きなことで生きてきた友人が、まさか突然そんな事を言い出すなんて…と、ただ驚くばかりでした。

友人とは20歳の頃から苦楽を共にした仲であり、互いに田舎者で、互いにお気楽者。

よくお好み焼きを食べに行ったし、よく飲みにも行った。

そんな関係性もあり、友人はいつもの口調でこう続けます。

「自分の興味のある分野、やりたい事や好きな事を中心にこの10年色々やってきたけど、もうそれも辞めようと思う。」

きっと大きな決断だったんだろうけど、友人のいつもと変わらない話振りに、聞いている私もいつもと変わらない相槌を打っていました。

久しぶりの焼肉に語彙力なく「ウマい!ウマい!」と連呼する始末で、言葉の重みなんてそっちのけ。

“この10年色々やってきた”という言葉の通り、彼の多面的な活動には私自身、いつも魅了されていました

そして、辞める理由も単純明快。

「好きなことを仕事にすると、途中から欲求が芽生え、結果的にいつも飽きる。好きなことこそ、大切にしたい。だから、仕事にするのは辞めようと思う。」

“好きだからこそ、大切にしたい。”

この感覚はよく分かります。

付き合って結構経つけど身体の関係がない時に「私って魅力がないのかな…?」と不安になる彼女に対する、「大切にしているからこそ手を出さない」という“良い男の定義”みたいな感じ。

焼肉で言うと「これ俺のー!」と言いながら、徐ろに“マイ肉”指定をして「これ、完璧に焼くから絶対触らんといてな!」と謎宣言した経験は誰にでも一度はあるはずです。きっと、多分。

それから数日、私は一人でエモい気持ちになっていました。

そんな矢先、偶然出会った記事があります。

あまりにもタイムリーでキャッチーなタイトルだったので読み進めると、このような事が書かれていました。

オックスフォード大学による「好きを仕事にした人ほど長続きしない」という調査結果

好きを仕事に派
「自分はこの仕事が大好きだ!」と感じながら仕事に取り組むタイプ
情熱派
「この仕事で社会に貢献するのだ!」と思いながら仕事に取り組むタイプ
割り切り派
「仕事は仕事」と割り切って日々の業務に取り組むタイプ

その後、全員のスキルと仕事の継続率を確かめたところ、もっとも優秀だったのは「割り切り派」でした。

〜中略〜

好きなことを仕事にしていた人ほど「本当はこの仕事が好きではないのかもしれない……」や「本当はこの仕事に向いていないのかもしれない……」との疑念にとりつかれ、モチベーションが大きく上下するようになります。

結果として、安定したスキルは身につかず、離職率も上がってしまうのです。

好きなことを仕事にしないほうが「幸福度」「年収」「仕事の継続率」が高い、という事実について。(Books&Apps)

「友人の選択はもしかすると、必然なのかも知れない。」

そう思いつつ、好きなことを仕事にしない方が、生き方としてのコスパが良いという考えにも違和感を覚え、モヤモヤしていた時、ふと思い立ちました。

ちょっと、待て。
「好きなこと」なんて変わるだろ。

冷静に考えれば、年齢と共に、体力も、生活環境も、価値観も変わるんだから、好きなことも変わりますよね、そりゃあ。

私自身もずっとバイクが好きで好きで堪らなかったけど、結婚して子供が出来ると「今はバイクよりも子供の方に熱中すべきだろ」と思えてるし、アイアンマンが好きで何かに付けてアイアンマンで比喩してたけど、会社に自分よりも熱力のあるアイアンマンファンが入社したら、原点回帰でウルヴァリン好きに変わったし、ずっと焼肉が好きで“牛肉最強”論者だったけど、去年あたりから胃もたれしやすい身体になり“魚の美味しさ”を見直し始めている自分もいるし、好きなことなんてちょっとした事がキッカケですぐに変わ…文字数。。。

自分が思う「こうあるべき」は一種のプライドであって、結局は自分の生き方美学の話。

で、あれば仕事というよりも働き方の話なのかも知れません。

「好きなことを仕事にする」のか「今の仕事を好きになる」のか。

好きなことを仕事にする場合は、自分の好きなことが世間から必要とされなければなりません。

今の仕事を好きになる場合にも、自分自身が周りに必要とされる存在でなければなりません。

共通点は「誰かに必要とされる存在になる」こと。

好きなことを仕事にして、自分の好きなことを必要としてくれる人が増え続けると、その仕事がずっと好きでいられるかもしれません。

組織の中で今の自分の仕事ぶりを必要とする人が増えると、自分の仕事に誇りが芽生え、今の仕事が好きになるかもしれません。

結局、どの働き方が正しいかなんて、その人それぞれです。

市場、業界、会社、同僚、家族・・・、仕事を通じて誰にでも必要とされる存在になれます。

働くことに「仕事」と「好き」を結びつける必要なんてありませんが、仕事を好きになることは割と簡単なことかも知れません。

そう感じた友人と行った「牛角」のキムチは、辛い物が苦手な私でも食べられるキムチでした。

Takanobu Maruyama