経営者のひとりごと

キャリアにおける「消耗」と「蓄積」

30歳を間近に控えた頃、自分のキャリアに悩んでいた時期がありました。

24歳でWeb業界に入り、社内ではデザイナーとして活躍出来ていたものの、自分の成長が鈍化している現実に日々焦りを感じていました。

「あと何年活躍できるだろう。」
「今の会社では活躍できているけど、他社では活躍できない気がする。」
「自分より若い世代が“良い仕事”をしている。」

そんな焦りを感じながら、私生活では結婚。出産も視野に入れていたので、人生のキャリアプランを練り直す時期でした。

10年先はおろか、5年先の未来すら見えない・・・

焦燥感に襲われながらも活躍のフィールドを変更し、広報/PRプランナーへのジョブチェンジを試みました。デザイナーとして自社のCIを担当していたのもあり、現場で経験を重ねつつ、やがてメーカーのWeb担当にでも転職しようと目論んでいました。

結果、その途中で事業承継の話があり、今は当時勤めていた会社の代表をしています。稀有なケースですが、今となっては「あの時に話を引き受けてよかった」と思っています。

キャリアは“消耗”する。

普段仕事をしていて自分のスキルに頭打ちを感じたり・壁を感じる経験は誰しもあると思います。

キャリアは経歴、これまでの経験の歴史です。その歴史からなる手法が日に日に通用しなくなっていく様は、歴史が薄れていくようにも感じ取れます。

一番の原因は「今」や「将来」に対する不安。

経験が通用しなくなる・歴史が薄れていくことは、キャリアが消耗されていく恐怖とも言えるでしょう。

今あなたが行っている業務はこれまでのキャリアを切り売りしながら行う消耗なのか、それとも経験として蓄積されていく業務なのか。キャリアパスを描くには、このバランスが重要になってきます。

キャリアの消耗と蓄積

だからと言って単調なルーティン作業が全てキャリアを消耗しているわけではありません。ルーティン作業の効率化も立派なキャリアの蓄積です。

では「蓄積」にはどうすればいいのか?

デザインのバリエーションやアイデアを“引き出し”という表現をします。

これはキャリアの消耗と蓄積にもよく似ています。

デザインの引き出しを増やすには日々の鍛錬が不可欠です。キャリアを蓄積することも当然、日々の鍛錬が不可欠です。ただ、闇雲に鍛錬をしても焦燥感や頭打ちの解消には繋がりません。

キャリアの“ためになる”消耗と蓄積には、いくつかの種類があります。

1. 「時間」の消耗と蓄積

時間は全ての人に平等で、有限です。

仕事が忙しく時間が取れない、休日は家の用事で時間が取れない、よく聞く話です。大切なのは今の時間があなたの将来にとって消耗なのか?蓄積なのか?を判断することです。

  • 誰でも(部下でも)できる仕事をしている
  • 関係の薄いプロジェクトの会議に参加しいる
  • 毎日遠方から通勤しないといけない

これでは限りある時間が消耗されていくばかりです。

ただし、時間はちょっとしたことで余白を設けることができます。

  • 誰でも(部下でも)できる仕事をしている
    → 周りに協力を仰ぎ、タスクを分散する
  • 関係の薄いプロジェクトの会議に参加しいる
    会議を効率的・生産的に行えるよう提案する
  • 毎日遠方から通勤している
    リモートワークをする(または通勤時間を有効活用する)

些細なことを解消することで細切れとなっていた時間にまとまりができ、濃度が高まります。タスクマネジメントに近い考え方ですが時間の余白を意識することで、効率的に仕事を熟すことができます。

時間の余白をつくることは仕事と生活の余白にも繋がり、結果的に時間の蓄積となります。

2. 「お金」の消耗と蓄積

「お金の消耗と蓄積」と聞くと“浪費”と“貯蓄”を連想しがちですが、そうではありません。キャリアに繋がるお金の使い方もあります。

❋❋❋ あるグラフィックのデザイナーの話 ❋❋❋

その方は日本酒が好きな方でした。

今の時代「飲みニケーション」なんて言葉は死語かもしれませんが、友人・知人・同僚と飲み歩くことを趣味としていました。

そして、趣味が高じて利き酒の資格を取得しました。

その資格は「日本酒の素晴らしさを人に伝える資格」です。

すると、ここで2つのスキルがシンクロします。

日本酒の素晴らしさを伝えられる人は、その素晴らしさを“デザイン”で表現することができます。

この方は今デザインの仕事をしながら、日本酒の素晴らしさを伝えるため「日本酒の海外向けパッケージのデザイン」を行っています。

❋❋❋

このように趣味へお金を費やすことで、将来のキャリアに向けた蓄積に繋がることもあります。

3. 「スキル」の消耗と蓄積

そして最後に、先程にも述べたスキルの消耗と蓄積。

今している仕事が過去のスキルから消耗しているものなのか?それともスキルとして蓄積されているものなのか?

RPGでのMP(マジックポイント)のような感覚ですが、ここのバランスこそがキャリアとしても大きく左右します。

ただし、スキルの消耗と蓄積を環境に委ねるのは要注意です。

良い環境に恵まれると当然スキルは身につきます。しかし、その良い環境も業界の変化や技術の進歩により変化し続けます。それと同時に自身も変化します。

この変化に順応できているうちは問題が無いのですが、何らかの影響により順応できなくなった時。その違和感に気づくことが何よりも重要ですが、次に重要になってくるのが自身の学習エンジンです。

またこれは技術的なスキルだけではなく、ヒューマンスキルにおいても同様です。時代背景により求められるヒューマンスキルが異なることは往々にしてあります。

ここで違和感に気付ず、自身で学ぼうとしない人は「老害」と呼ばれてしまいます。

スキルにおいては領域が広いので、まずは自分の適応範囲を少しづつ広げ、新しい分野への活路を見出す。そして、そこへ挑戦し続けることで、自分なりの知見を手に入れるべきでしょう。

まずは「点」をつくろう。

とは言え、自分のキャリアパスを描こうにも「10年先のことなどわからない」というのがリアルな意見ではないでしょうか。

iPhone誕生の革命のように、AIやロボットにより、いつ業種がコモディティ化に直面するか予測できません。普通大まかなキャリアパスを描き、途中で軌道修正をしながらなんとかゴールまで運んでいくものです。

だからこそ、自分にしか出来ないもの(情熱を注ぐことができるもの)に目を向け、いきなりキャリアパスとしての「線」を描くのではなく、「点」を多くつくる必要があるのではないかと思います。

もし、この記事を読んでいる方で将来への迷いがある方。

まずは「時間」「お金」「経験」いずれかの蓄積を増やすことから始めてみてはいかがでしょうか。

投稿者: Takanobu Maruyama

大阪でWeb制作会社「株式会社ユニオンネット」、高知の馬路村でデザイン事務所「ミトネデザイン」を運営。経営・人事・広報、たまに制作者でもある香川県生まれ3児の父です。
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